必ずおさえておきたい「定員超過利用減算」の要点解説

今回は、障害福祉サービス事業を運営するうえで重要な「定員超過利用減算」の基本的な考え方と、具体的な計算方法について、障害児通所支援事業所を例に、分かりやすく解説します。

≪本記事で分かること≫

  • 減算対象になるサービスの種別
  • 定員超過利用減算の内容と、報酬への影響
  • 具体的な判断基準
  • 運営上の注意点・ポイント
目次

減算対象の障害福祉サービス

療養介護、生活介護、短期入所、施設入所支援、自立訓練(機能訓練)、自立訓練(生活訓練)、就労選択支援、就労移行支援、就労継続支援A型、就労継続支援B型、児童発達支援(旧指定発達支援医療機関を除く)、放課後等デイサービス、共生型障害児通所支援、基準該当通所支援、障害児入所支援(指定医療機関を除く)

「定員超過利用減算」と、報酬への影響

定員超過利用減算とは、事業所の利用定員を超えてサービスを提供したときに、利用者全員分基本報酬(加算算定)を30%減算するものです。

児童発達支援等の事業所では、指定基準においても「利用定員や発達支援室の定員を超えて支援を提供してはいけない」とされているため、定員を超えて受け入れることは、原則、基準違反とされています。

例外:定員超過が認められるケース

 ただし、災害・虐待や以下のようなやむを得ない事情があるときは、例外的に定員超過が認められます。

  • 災害や感染症などによる緊急事態
  • 障害の特性や病状で欠席が多いが、継続的な支援が必要な障害児を支援するケース
  • 家庭や地域の事情(他の受け入れ先がないなど)で、その事業所で受け入れないと障害児の福祉が損なわれるケース

判断基準

1. 単日の大幅な超過(1日単位)

1日でも、利用者の数が一定の基準を超えると、その日の利用者全員の報酬が減算されます。

利用定員減算の基準具体的な例
50人以下利用定員 × 1.5
➡ 利用定員が1.5倍(150%)を超えた場合
定員10人の場合 → 15人までOK
16人目からその日全員分が減算
51人以上【障害児通所支援の場合】
利用定員 + (利用定員-50)× 0.25 + 25 を超えた場合

【日中活動サービスの場合】
(利用定員-50)× 1.25+75 を超えた場合

※ともに、小数点以下切上げ
(障害児通所支援の場合)
定員60人の場合 → 88人までOK
89人目からその日全員分が減算

(注意)
①利用定員が51人以上の場合は、障害児通所支援と、日中活動サービスの計算方法が異なるため、注意が必要です。
【日中活動サービス】…生活介護、自立訓練(機能訓練)、自立訓練(生活訓練)、就労移行支援、就労継続支援A型、就労継続支援B型
②療養介護、短期入所(ショートステイ)、施設入所支援、障害児入所支援についてはさらに計算方法が異なります。

2. 常態的な超過(過去3か月単位)

直近の過去3か月間の利用者の合計人数(延べ障害児数)が、決められた基準を超えていると、当該1か月間(※)の利用者全員の報酬が減算されます。これは「常に定員を超過している状態」と見なされるケースへのペナルティです。

利用定員減算の基準(延べ人数)具体的な例 (開所22日の場合)
11人以下(利用定員 + 3) × 開所日数 × 過去3か月
を超えたら減算
定員10人 → 858人までOK
12人以上利用定員 × 開所日数 × 過去3か月 × 1.25
を超えたら減算
定員30人 → 2,475人までOK

(※)当該1か月間 の考え方
例えば、2月・3月・4月の利用者の合計人数(延べ障害児数)が基準を超えた場合、5月に定員超過利用減算を算定する必要があります。

運営上の注意とポイント

定員超過が認められる場合でも、職員の配置(人員基準)を満たしていることは大前提です。

(例:利用人数が12 人の場合、児童指導員又は保育士を3人配置すること)

災害等やむを得ない事由により受け入れる障害児は、「延べ障害児数の人数」から除くことができます。
ただし、「障害の特性や病状等のため欠席しがちな子ども」の継続支援は、この取扱いの対象とはなりません(減算の判定人数から除外されるわけではない)ので注意が必要です

要点とまとめ

  • 原則:定員超過は基準違反 
    減算がかからないから定員を超えて受け入れを行って良いという解釈は、誤りです。
  • 例外:やむを得ない事情等がある場合は認められる 
    管轄の自治体に相談し、この場合は例外となるかを確認してください。
  • 減算ルール:1日単位と3か月単位で判定する 
    「1日ごとの実績」は判断しやすいのですが、「過去3ヶ月の実績」については、「定員超過利用減算対象確認シート」などを活用し、開所日数や延べ利用者数から正しく判断し、算定漏れを防ぐ必要があります。

定員超過利用減算は、事業所の経営に影響を与えるだけでなく、利用者の安全と適正な支援を守るためのルールとして理解し、適切な運営を心がけましょう。

《参考資料》

  • 障害児通所支援における定員超過利用減算の取扱いについて
    (令和4年2月28日厚生労働省社会・援護局障害保険福祉部障害福祉課障害児・発達障害者支援室)
  • 参考資料「【別紙1】会計検査院による指摘事項(詳細)」
  • 参考資料「【別紙2】障害児通所支援における定員超過利用減算の要件等について」
  • 参考資料「障害児通所支援事業所における定員超過利用減算対象確認シート」
  • 障害福祉サービス等報酬(障害児支援)に 関するQ&A 一覧令和6年6月10日時点
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